Restaurant ESqUISSE | レストラン エスキス

Behind the Dishes

2020.08.24

私が生まれ育った地中海沿岸の地域にもMurène(ミュレンヌ)と呼ばれるウツボ科の魚、鱧がいます。鱧は大衆魚で、歴史的にも貧しい庶民の魚でした。マルセイユ近郊ではブイヤベースやアイオリづくりに頻繁に使われます。

一般にフランス人は鱧を味気ない魚だと言い、私も日本に来るまでそう思っていました。しかし日本に来てしばらくすると、この味気のなさもひとつの味なのだということに気づきました。

きれいに掃除しておろし、丁寧に火を入れて、合わせるものを注意深く選べば、鱧はすばらしくデリケートな風味を発揮する魚なのです。

今シーズンはイヌハッカのオイルとともに低温で火を入れて鱧の身の味を上品に高め、鱧の皿に供する素材どれを合わせて鱧をお召し上がりいただくかによって、鱧の表情が変化する多彩な一品となっています。